もしあの時手を伸ばしていたら君はどうしていた?




「こんなところで何してるんだ?」
「……あー、遠江」


目の前に立つめちゃくちゃ背の高い男(遠江なんだけど)は、寒そうに両手で体を抱きしめていた。少し鼻が赤くなってて、トナカイみてー。

「寒くないのか、藤」
「んあー?寒い、んじゃねえ?」

寒いんじゃねえって、と俺の言葉を反芻する遠江。きっと、俺のことを奇妙がってんだろうなあ。当たり前か。今は2月上旬で雪が降ってもおかしくない時期、真っ只中。そんな時期にコート、ましてや学ランさえも着ずに体育館の出入口に座ってる俺は端から見ればオカシイやつだろう。 (あ、今の俺の格好は薄っぺらいYシャツ一枚と制服のズボンと下着だけ)

「なあ、遠江」
「なんだ?」
「あれからもう一年経つのになんで忘れれねえんだろ?」
「藤……」
「なんで、あの時アイツの腕を掴んで……」

なんか涙が溢れた。ボロボロ、ボロボロ、

「藤」
「離したくなかったのに」
「ああ」
「好きだったんだ」
「ああ」
「なのに、俺は」


(バイバイ、藤くん)


「今でもアイツの悲しそうな顔が離れねえんだよ」

寒い、寒い、体も、心も、なにもかも。

「藤、ここは寒い。だから、中に入ろう」

遠江の手が頭に伸びてきて、その手の温かさは(俺の話に付き合ってくれたせいで)冷たくて、だけどその冷たい手が温かく感じた。













二月の
(死にゆくように消える影に別れを告げたあの日、少女は二度と還らない)





2007/09/27


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